終了【7/20(水)】第84回わだい浪切サロン「音の静寂を聴く -ピアニッシモへの無限の広がりを全身で感じるクラヴィコードの世界-」
公開日 2016年06月16日
日時 : 2016年7月20日(水) 午後7時~8時半
話題提供 : 山名 敏之 (和歌山大学教育学部 教授)
場所 : 岸和田市立浪切ホール 1階 多目的ホール
?? 今日私達は電気によって拡張された音楽に囲まれています。テレビ、ラジオ、オーディオ、レストラン、スーパーマーケット、駅、学校、とありとあらゆるところで大音量の洪水です。ポピュラーミュージックのコンサートを聴き終えると暫くの間難聴になることもしばしばです。
?? ところが、18世紀までの西洋には、蝋燭の炎のゆらぎを聴くかのようなとても繊細な音の鍵盤楽器が存在しました。それがクラヴィコードです。しかもこの楽器は私達が良く知っている、J.S.バッハやモーツァルト、そしてハイドンといった作曲家に愛好され、彼らの管弦楽を用いた規模の大きな作品の作曲にも使用されたのです。あのモーツァルトのレクイエムもクラヴィコードで作曲されました。それにもかかわらず、この楽器の音の小ささゆえに経済効率最優先の20世紀においては殆ど忘れ去られた存在でした。音空間の広がりは、実は音量とは無関係である、そんな神秘的な体験をしてみませんか?
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※事前申し込み不要、参加無料
開催レポート
参加者80名
当日のプログラム(PDF)(演奏曲目、解説)
(概要)
「この楽器は、多くの人に向けて演奏するのに適した楽器ではありません」との山名先生の解説のとおり、予想以上の多くの方が参加された会場では、クラヴィコードの小さい音量が届くのか、少し不安でした。
クラヴィコードの歴史はピアノよりも古く、14世紀ごろに発明されたと言われています。
16世紀~18世紀ごろに広く使われましたが、音の小ささゆえ、作曲や少人数の集まりでの演奏などに使用されました。
しかし、19世紀以降には生産されなくなり、20世紀の終わりにその価値が見直されるようになるまで、資本主義の価値観が広がる時代には、クラヴィコードは「非生産的」な楽器とされてしまったのです。
山名先生の演奏を聴き始めた時間帯には、クラヴィコードの小さな音を聴き取ることに集中しようとしなければなりませんでした。しかし、その後、聴き続けるにしたがい、その音がはっきり聞こえるようになってきます。
先生の演奏は素晴らしく、集中しようとしなくても、気がつけば聴き入ってしいまいます。そうすると、会場の空調の音や会場の外にいる人の話し声が耳に入ってくるようになるほど、神経が研ぎ澄まされていきました。
普段、私たちがどれほど大きな音に囲まれ、それによって、身近にあるさまざまな音を聞き分けられないほどになってしまっていることがよく分かりました。
-アンケートより-
?初めて見る楽器でなおかつ演奏が聴けてよかったです。興味がわき、家に帰って調べようと思いました。(20代女性)
?PP(ピアニッシモ)の音なのに、演奏を聴いているうちに、音がだんだん広がってきて大きい音に聞こえてきました。想像力をかきたてる音で、心も体も解放されました。日常生活の中でもppの音を感じたいと思います。(50代女性)
?先生のお話もさることながら、名演奏に聴き入っていました。耳も次第に慣れてきて、終わることには違和感なく聞こえてきました。素晴らしいコンサートを聴いた感じです。先生が実に楽しそうに演奏されていました。(70代男性)
?クラヴィコードのような格調高い静かな余生を送れればいいなあ。(80代男性)
画像をクリックすると、プログラムをPDFで見ることができます。
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