- 論文の概要
- 近年,発育?発達の重要な時期にありながら,栄養素摂取の偏りなどの偏食に関する問題が多様化,深刻化している.小中学生の食事状況調査では,学校給食を残す理由の約6割が「きらいなものがあるから」と回答している.同様に,米国中西部にある大学に在籍する学生を対象にした調査では,大学生の4割弱が偏食で,その65%は口にする食品が10品未満という回答が得られた.また,偏食をする大学生は社会不安障害のスコアが高く,QOLが低いという結果が述べられている.ここで社会不安障害とは,何か失敗して人前で恥をかくのではないかと不安を感じる病気である.また,極端な偏食は一般的に,発育不全,免疫力低下,便秘,肥満や生活習慣病,怒りやすくなるといった精神面の悪影響が考えられる.小中学校で行われている食育として調理実習,野菜の栽培活動,田植えや芋掘りなどの農業体験,給食だよりなどの家庭と連携した取組,外部講師による食育に関する特別授業の実施などがある.しかし,これまでの学校給食では担任の先生が完食できない子に対して,教室に残らせて無理やり食べさせているなどの事例があるそのことから,嫌いな食べ物に対してより嫌悪感を感じたり,不登校になった児童もいる.小川は,嫌いな食べ物を無理に食べさせることは大脳皮質からの不快な情報が伝えられることによって食欲をなくすといったことから,望ましい食育とはならないと指摘している.食べ物の好き嫌いを克服する方法として,苦手な食材を星形やハート形にくり抜くことで見た目を変える,少しでも食べたら褒める,一緒に買い物をして食材を選ばせたり,一緒に料理をする,家庭菜園で野菜などの食材を育てる,食材を細かく切って好きな食べ物に混ぜるなどがある.また,学校給食ではピーマンの苦みを抑えるために繊維に沿ってカットしたり,トマトの酸味をまろやかにするために時間をかけて煮込むといった調理の工夫を取り入れている.一方,情報技術を取り入れている例もあり,北村や小坂はゲーム要素を活用した研究を行っている.本研究ではスマートグラスを活用することで,好き嫌いの対策を目的とし,苦手食材の克服を支援するシステムを提案する.本稿では,提案システムの概要について述べる.
- 発表時の様子
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- 発表時のスライド
学生奨励賞:磯部貴翔さん(学部3年)
論文名:「スマートグラスを用いた苦手食材克服システムの提案」
学会名等:第85回情報処理学会全国大会
受賞日:2023年3月
関連サイト:https://www.ipsj.or.jp/award/taikaiyusyu.html